アクセシビリティ(A11Y)と聞いて何を思い浮かべますか?
多くの人は「色のコントラスト」「字幕」「代替テキスト」など、身体的な制約がある学習者への配慮、すなわちインクルーシブデザインを思い浮かべるでしょう。もちろん、これも学習環境の土台として不可欠です。
ただ、IDの仕事はそこで終わりではありません。
IDが解決すべきアクセシビリティの課題には、専門用語(Jargon)が飛び交う内容を「いかに理解し、行動できるか」という認知的な壁もあります。
ID における「アクセシビリティ」とは
アクセシビリティ(Accessibility、略してA11Y)とは、誰もがその能力や環境に関わらず、情報やサービスにアクセスし、利用できる状態を指します。
一般的なIT分野では、身体的・技術的な障壁を取り除くことに焦点が当てられますが、インストラクショナルデザイナー(ID)におけるアクセシビリティは、さらに一歩踏み込みます 。それは、単に情報が見える・聞こえるだけでなく、「その情報を理解し、行動を変える」ことができる状態を保証することです 。
IDの視点から見ると、アクセシビリティは以下の二つの要素で成り立っています 。
- 物理的アクセシビリティ(インクルーシブ):文字のサイズや色のコントラストなど、物理的な「使いやすさ」を促すデザイン 。
- 認知的アクセシビリティ:専門用語を簡単な言葉やイラストで噛み砕くなど、学習・理解の障壁(認知負荷)を取り除くためのデザイン 。
では、具体的に例を挙げてみてみましょう。
①物理的アクセシビリティ:同じ情報なのに。。。
物理的な面から見たアクセシビリティについて見てみましょう。


この二つは同じことが書いてあります 。どちらが見やすいでしょうか?
一見、左側の方がカラフルで目がいきやすいですが、背景と文字の色のコントラストが不十分で、文字サイズも「読みやすい」とは言い切れません 。他方、右側はシンプルですが、背景と文字のコントラストがはっきりしていて、文字サイズも適切です 。
誰もが「使いやすい」情報なのは、適切なコントラストとサイズが確保されている右側ですね。
②認知的アクセシビリティ:同じ内容なのに。。。
次に、認知的アクセシビリティの面から見てみましょう。


どちらも同じ内容ですが、どのように見えますか?
左側のレシピを読んで具体的に映像が浮かぶ人は少ないのではないでしょうか 。そもそも専門の人でない限り、何を言ってるかあまり伝わらないように思えます 。
対する右側は専門用語をかみ砕いて一般向けの言葉に変えており、言葉を補足する形でイラストも使われています。
このように、伝えるべき情報をいかに「使える情報」に変えるかという翻訳者の役割こそが、IDの核となる能力です。
アクセシビリティ実現のポイント
インストラクショナルデザインにおいて、「私もわかるしみんなもわかる」など、デザイナー視点で偏って見ないことが大事です 。
そこでアクセシビリティを考慮し、どんな学習者でも情報を「理解し、記憶し、活用できる」ことを保証するデザイン戦略を取り入れましょう 。
主なポイントとしては、以下が挙げられます:
✅ チェックリスト:物理的アクセシビリティ
| 項目 | 目的とIDのチェックポイント |
| 文字サイズ | 見出しや本文は適切なサイズになっているか。パソコンや携帯など、どんなデバイスでも適切なサイズになっているか。 |
| 色のコントラスト | 背景と文字のコントラストは十分にはっきりしているか。背景の色によって文字が見にくくなっていないか。 |
| メディアのサイズ | 挿入された画像は適切なサイズか |
| スペース | 文字間や行間のスペースは適切に取られているか |
✅ チェックリスト:認知的アクセシビリティ
| 項目 | 目的とIDのチェックポイント |
| 専門用語(Jargon)の翻訳 | 知識レベルに関わらず理解できるか?業界用語や略語を、学習者が既に知っている言葉(Plain Language)に翻訳しているか。初出時に定義を添えているか。 |
| 構造とナビゲーションの一貫性 | どこにいるか、次どこに行くかがわかるか? 章立て、見出し、ナビゲーションボタンの位置や機能が、教材全体を通じて一貫しているか。 |
| 簡潔な文体と箇条書き | 情報を素早く処理できるか? 一文が長すぎないか、能動態を多用しているか。箇条書きを積極的に使い、文章の密度を下げているか。 |
| 「絶対に必要」な情報に絞る | 学ぶべきことに集中できるか? SMEが「知っておいてほしい」という背景情報と、パフォーマンスに直結する「絶対に必要」な情報を切り分けているか。 |
| 情報の多重提示(マルチモーダル) | 理解を助ける手段が複数あるか? テキストだけでなく、図、グラフ、インフォグラフィックなど、視覚的な要素で重要な概念を補強しているか。 |
参照:https://www.w3.org/WAI/
まとめ:アクセシビリティこそIDの差別化戦略
アクセシビリティの仕事は、単に技術的な準拠ではありません 。それは、「目的達成の障壁」を取り除くことで、すべての学習者の効果を最大化するというIDの究極の役割です 。
このアクセシビリティを意識した学習デザインは、結果的に誰にとっても分かりやすく、効率的な教材を生み出します 。
アクセシビリティの実現こそが、プロジェクトの成功と、インストラクショナルデザイナーとしての価値を差別化する戦略となるでしょう 。
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