その「頑張り」は本当に成果ですか?
📌 シナリオ:提案が「手抜き」に変わった瞬間
あなたはインストラクショナルデザイナー(ID)です。 あなたの会社では、入社したら3日間の新人研修が行われます。
あなたはこの研修は1日にできると考え、その非効率な研修を改善すべく、IDの論理に基づいて「3日間の研修を、1日のウェビナーとEラーニング」に効率化する企画を上層部に提案しました。
しかし、返ってきた反応は、あなたの専門性とは異なる「感情」や「文化」に根ざした、厳しいものでした。
- 「オンラインにしたらサボって適当に済ませるかもしれない」
- 「人と人との交流があってこその研修だ」
- 「今まで3日かけていたのに、たった1日で済ませるなんて現場への配慮が足りない」
「3日間の対面研修」が「1日のオンライントレーニング」になるという、一見すると合理的なこの提案が、なぜ賛同を得られないのでしょうか?
このシナリオこそ、日本の企業研修における「研修時間=頑張り」という独特な文化と、私たちIDの専門家が目指す「成果までの最短距離」が根本的に衝突している実態を映しています。
そこで本記事では、この文化的な摩擦を避けつつ、IDを使って効率化を「戦略的な成果」として進めていく具体的な戦略についてお話します。
なぜIDの「効率」は衝突するのか?
日本独自の「頑張り」文化と「時間信仰」
多くの日本企業には、プロセスそのものが「努力」や「熱意」として評価される「時間信仰」が存在します。研修後に具体的な行動変容やビジネス成果を測る仕組みが弱いため、結果的に「時間」という曖昧な軸で評価せざるを得ない構造があります。
また、eラーニングのアクセスログの厳密なチェックや、オンライン研修でのカメラオンの強制といった「監視文化」がID導入を阻みます。学習者は「学ぶこと」より「監視の目をクリアすること」に集中し、本質的な学習が疎かになるのです。
IDが求める「効率」の定義
IDにおける「効率化」は、決して研修の手抜きや時間短縮につながるわけではありません。
IDは、ADDIEモデルの分析(Analyze)フェーズに基づき、まず「パフォーマンスにおける期待と現状のギャップ」を明確化し、それを埋めるのに本当に必要な要素のみを「設計(Design)」するプロセスです。
つまり、我々IDの結論は明確であり、「時間をかける=一生懸命やる」ではないということです。
IDの目的は、最短で最大の成果を出すことであり、私たちの言う「効率化」は、「学習者が最も早く現場で成果を出せるように「学習体験を最適化」する」ことなのです。
「手抜き」から「戦略的成果」への変換
では、IDの導入を「手抜き」ではなく「戦略的貢献」と見なしてもらうにはどうすればいいのでしょうか。
例えば以下のような戦略が挙げられます:
戦略 1: 頑張りを「行動変容」に変換する(カークパトリックレベル3)
評価軸を「参加した」という頑張りから「研修後に現場で行動が変わったか」という成果に切り替えます。
カークパトリックのレベル3(行動変容)に基づき、研修終了後、一定期間を経てから上司の評価やピアレビューを通じて、具体的な行動の変化を測定します。これにより、「時間」ではなく「行動」という確固たるID論理で評価できます。
戦略 2: 浮いた時間を「戦略的な投資」としてコミュニケーションする
効率化で浮いた時間や費用は、「削減コスト」ではなく、例えば費用だったら、「その他の問題に取り組むためのトレーニングの開発および実施」、時間だったら「1日は全体の新人研修に費やし、残りの2日は部門ごとに分かれてより専門的な研修を行う」など、「より重要な学習や戦略的な業務に再投資できた時間」としてポジティブに報告します。
- コミュニケーション例文: 「3日間の対面研修を1日に最適化したことで、浮いた〇〇時間をOJT(現場での実践)の時間に充当し、即戦力化を〇〇%加速させました。」
これは「手抜き」ではなく、「リソースの戦略的最適化」であり、会社のリソースを有効活用した貢献であると、上層部にロジックを提供します。
戦略 3: 監視から「自己管理」へと評価軸を転換する
監視文化の壁を乗り越えるため、受講者の「席にいる時間」といった監視をやめ、学習後の「課題達成度」や「現場での実践レポート」といった成果に直結する項目に評価を移行します。
学習者に自己調整学習(Self-Regulated Learning)を促すためのフィードバックを設計することで、監視コストを削減しつつ、自律的な学習者を育成することが可能になります。
極端な言い方をすれば、監視そのものが成果を生むわけではありません。いくら時間をかけようが机に向かって一生懸命やろうが、結果が出なければ、監視は不毛な労力になってしまいます。
「監視されている」ということで「とにかく無事に研修を終わらせる」ことが目標になってしまっては、その3日間は「ただの3日」になってしまいます。
まとめ
本記事では、日本企業に根付く「研修時間=頑張り」という文化が、なぜIDの「効率化」と衝突しやすいのかを整理しました。
IDにおける効率化とは、手を抜くことではなく、学習者が最短で成果を出せるように学習体験を設計することです。
あなたの組織では、研修の価値は
「どれだけ時間をかけたか」で評価されていますか。
それとも「どんな行動変容が起きたか」で評価されていますか。
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