昔は「通信教育」、今は「オンライン学習」として、自分のペースで学ぶことができますが、今は自分でできる学習プログラムが本当に多種多様にありますね。
朝活として少し早く起きて英単語を覚える、サブスク講座を通勤電車で見る、週末に無料で見られるウェビナーを視聴するなど、様々な選択肢があります。
ただその一方、色々試した挙句どれも長続きしなかったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
「無料だからやってもやらなくても変わらない」、「時間がないからまた今度する」、「一人じゃやる気が起きない」など、「自分で学ぶ(セルフスタディ)」というスタイルがうまくいかない理由はさまざまです。
しかし、学習者が途中で挫折してしまうのは、本当に本人の「やる気」や「意志の強さ」のせいだけでしょうか?
インストラクショナルデザイナー(ID)の視点で見れば、挫折の多くは「学習者の気合が足りない」のではなく、「設計が現代人の脳の仕組みに最適化されていないこと」に起因しているような気がします。
そこで今回は、学習者が様々な理由から「ついやめてしまう」のを未然に防ぎ、完走へと導くための3つのID戦略についてお話しします。
1. 「無料の罠」を突破する:心理的投資の設計
無料、あるいは安価なeラーニングの最大の敵は、「失うものが何もない」という気楽さです。人間には「得ること」よりも「失うこと」を強く忌避する損失回避(Loss Aversion)という心理があります。
実際、筆者も数年前にオンライン講座を取った時は「これだけ払ったんだから頑張らねば!」と頑張りぬきました。無料だったら500%挫折してます(笑)。もちろん講座の内容や自分の目標などもありますが、やはり授業料によってコミットできたのかもしれません。
ID戦略例
学習者に莫大な料金を払わせる必要はありませんが、あえて有料にするのも一つの戦略になるかと思います。学習者は何かしら払うことで、それがいい意味でプレッシャーになり、学習のモチベーションになりますからね。
また、あえて最初に「このコースで何を成し遂げたいか」を自分の言葉で入力させたり、現在のスキルチェック(Pre-test)を受けさせたりするのもいいかもしれません。 「自分の目標を宣言した」「ここまで進めた」という既得権益を学習者に感じさせることで、「ここでやめるのはもったいない」という心理的なコミットメントが生み出されます。
2. 「1時間の壁」を壊す:ドーパミン・チャンキング
筆者も含めて、現代人は大体待つのが苦手です(笑)。用事があればすぐに済ませたいし、わからないことがあればすぐに解決したい。そんな現代人に「画面の前で1時間座って集中してください」というのは、ショート動画やSNSに慣れた現代人には、もはや「無理ゲー」に近い要求です。
ID戦略例
上の例のように、60分を一気にやるとなるとハードルが高いかもしれませんが、5分を12日に分けて行うのは、「できるかもしれない」気持ちになるのではないでしょうか。どちらも同じ60分なのに、その60分がどのように提供されるかで、受ける側の気持ちが変わってきます。
また、その12回を例えばスタンプラリーみたいにして可視化すると、自分の現状がわかって完走しやすくなります。途中でお休みしても、どこから再開すればいいかもわかりますもんね。
そして、単なる分割ではなく「報酬」を設計する コンテンツを5〜10分単位に刻む(チャンキング)のは基本ですが、重要なのはその「つなぎ目」です。 各チャンクの終わりに、すぐに正解がわかるクイズや、学んだことを即座にアウトプットする場を設けます。この「できた!」という小さな成功体験(Quick Wins)が脳内でドーパミンを放出させ、「次の5分もやってみよう」という連鎖を生み出します。
3. 「誰かいますか?」に応える:社会的実在感の演出
自習の最も過酷な点は、画面の向こうに誰もいないという「孤独感」です。勉強してても、今どこを勉強しているか、テスト対策はどうするか、ここがわかったか確認したいなど、生身の人間との交流がしたいと思う時があるのではないでしょうか。一人で黙々と勉強するのは集中できていいかもしれませんが、たまに「誰かぁ~」と言いたくなる時もありますよね(笑)。
ID戦略例
たとえリアルタイムの交流がなくても、設計次第で「Social Presence(社会的実在感)」を吹き込むことができ、「人間のつながり」を演出することができます。
例えば、コースをガイドやコーチ付きのストーリー仕立てにして、 「〜である」という説明文ではなく「〜してみませんか?」といったような語りかけのトーンにして「学習者に語りかける対話型」の文章にしたり、登録者との交流やQ&Aに対応する掲示板を設けたり、実際に会って話すことができなくても、「生身の人間同士の交流」を提供することはできます。
また、AIを単なる検索機ではなく、「一緒に伴走し、励ましてくれる相棒」としてキャラクター化するのもいいですね。例えばわからないことがあるときに、「これについてこう思うけどどうかな」とAIに聞いて意見をもらったり、課題があったら「これでこの課題を進めようと思うけど大丈夫かな。」ってフィードバックをお願いしたり。AIが相棒だと「今聞いても大丈夫かな。寝てるかな」など心配する必要がありません(笑)。
まとめ:設計が「背中」を押し続ける
「やる気を出せ」と精神論を説くのは、IDの仕事ではありません。 学習者が「うんうん。それでそれで?」、「どんどん行こう」、「ついうっかり最後までやってしまった」といった状態を、戦略的に作り出す仕事です。
効率化(AI)を追求し、専門家の知恵(SME)を詰め込んだその先に、学習者の心に寄り添う「挫折させない設計」があって初めて、学びは成果へと繋がります。
次回のコース設計では、「意志の力」を信じる代わりに、「設計の力」を信じてみませんか?
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