前回は「お仕事引き受けすぎ問題」についてお話ししました。忙しさに負けて設計のプロセスを端折ってしまうと、そのツケは意外な形で回ってきます。その代表例として、評価設計の甘さによる「全部『5(大変満足)』の満足度調査」が挙げられます。
アンケート結果を見て「満足度100%!大成功だ!」と喜んでいる方、実はそれは、学習者からの「やっつけ仕事」かもしれません。
そこで本記事では、インストラクショナルデザインにおける「評価」の設計についてお話します。
その「満足」に中身はありますか?
研修の最後に配られるアンケートの全項目に「5(非常に同意する)」が並んでいるのを見て、胸をなでおろした経験は誰しもあるはずです。 しかし、ここには以下のような大きな落とし穴が潜んでいます:
- 「連打」の誘惑: 設問数が多すぎたり、研修の終了時間が押していたりすると、学習者は「早く帰りたい」一心で、中身を読まずに「知ら~ん」っと適当に一番右のボタンを連打する。
- スマイルシートの限界: 「講師の態度は?」「会場の室温は?」といった質問ばかりでは、肝心の「何ができるようになったか」が見えてこない。
「全部5」の結果は、時に「可もなく不可もなく、特に印象に残らなかった」ことの裏返しでもあるかもしれません。
なぜ「アンケートの張り切りすぎ」が裏目に出るのか
IDとして詳細なデータを取ろうと意気込むあまり、アンケートを細かく作りすぎていませんか?実はこれが「全部5」を誘発する原因になります。
学習者にとって、研修後のアンケートは「振り返り」の時間であるべきです。しかし、「あなたが知りたい」設問が20問も30問もあると、それは「内省」ではなくただの「やっつけ作業」に変わります。
考えてもみてください。研修が終わって考えることは何ですか? 多くの人はもう研修のことなんか考えたくないですよね。質問を詰め込みすぎることは、学習者の貴重なアウトプットの機会を奪い、結果としてデータの信頼性を自ら下げてしまうことになるのです。

「評価」の目的を再定義する:笑顔ではなく変化を測る
アンケートの目的は、ステークホルダーに「満足度」を報告して安心させることではありません。プログラムを改善し、学習者の「行動変容」を促すことです。
- 設問を絞り込む: 5段階評価や二者択一の他に、「明日から現場で使う上で、一番の障壁は何ですか?」や「この研修で学んだことを現場で活かすために、どんなサポートが必要ですか?」といった、考えないと答えられないオープンクエスチョンを1つ2つ入れるだけで、データの質は激変します。
- 「満足」の先を見る:学習者の反応だけでなく、その後の個人のパフォーマンスや現場の変化をどう測るか。事後のフォローアップや数ヶ月後のインタビューなど、点ではなく線で評価を捉える必要があります。

まとめ:真の評価は「現場」で起きる
「全部5」のアンケート結果に満足して改善を止めてしまうこと。これこそがIDが最も警戒すべき落とし穴です。
素晴らしい評価とは、アンケートの数字ではなく、「受講者が現場でこれまでと違う行動をとった瞬間」にあります。 アンケートを「作業」にさせない。そして、数字の裏にある学習者の本音に耳を傾ける。研修後のアンケートがその研修のためだけではなく、「次につながる評価設計」になるように目指しましょう。
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