「終わったー!」 研修の最終セッションが終了し、受講者が満足げな顔で部屋を出ていく。手元のアンケートをさっと集計すれば、並んでいるのは輝かしい「オール5」の数字。 「はー終わった〜。やっぱり私最高。」 ……ちょっと待ってください。そこで終わりですか?あなたの仕事がここで終わっているとしたら、その豪華な研修は、夜空に消える一瞬の「打ち上げ花火」で終わってしまうかもしれません。
そこで本記事では、研修担当者がつい陥ってしまう「研修やりっぱなし問題」についてお話します。
満足度の余韻に隠れた「冷酷な真実」
前回は、アンケートの「オール5」が必ずしも成功を意味しないという話をしました。しかし、本当の恐怖はその先にあります。研修担当者が「アンケート結果も良かったし、無事に終わった!」と打ち上げ(あるいは安堵)をしているその裏で、受講者の頭からは、学んだ内容が驚くべきスピードでこぼれ落ちているのです。
研修の本当の成果は、当日の熱狂ではなく、その後に現場で起きる「変化」——パフォーマンスの改善、技術の向上、問題解決、あるいは外部からの評判——によってのみ証明されます。
そこで重要になるのが、学んだことを忘れない「知識の維持(Knowledge retention)」と、それを現場で実際に使う「学習転移(Transfer of training)」です。いくら研修で「わかった!」と盛り上がっても、現場に何も残らなければ、その設計は「うまくいかなかった」ということになります。
研修は「イベント」ではなく「プロセス」である
多くのIDが陥る落とし穴は、研修当日を「ゴール(終着点)」に設定してしまうことです。
イベント思考になると、当日の盛り上がりがピークであり、それが終われば「あー終わったー」と解散。すぐに「はい、次のプロジェクトいってみよう。」となってしまいます。
そこで研修の成功には、研修はあくまで現場を変えるための「きっかけ」にすぎない、というプロセス思考が重要になってきます。
当日どれだけ豪華な打ち上げ花火を上げても、その光が現場のデスクを照らし続けなければ、投資した時間もコストも「ただの気晴らし」に消えてしまいます。
私たちID(インストラクショナルデザイナー)がフォーカスすべきなのは「研修の実施」ではなく、「研修による現場の変化」です。
「現場の日常」という強力な引力
受講者が研修室を一歩出た瞬間、彼らを待ち受けているのは「溜まったメール」「緊急のトラブル」「いつものルーチン」という強力な引力です。 研修で学んだ「新しいやり方」は、慣れるまでは一時的に効率が落ちます。フォローアップがないと、受講者は数日以内に、より楽で馴染みのある「元のやり方」へと引き戻されてしまいます。これがIDの世界で言われる「学習転移の失敗」です。
だからこそ、研修内で「わかった」の先にある「どう活かすか(Apply)」までを徹底的に設計する必要があります。
例えば、研修の中に極めて実践的なロールプレイやケーススタディを取り入れ、「新しいやり方」への心理的抵抗を最小限に留めておくなど、研修を、現場での実践を見越した「予行演習」にしておくといいですね。
設計者の仕事は「研修が終わった後」にこそある
この落とし穴を避けるには、プログラムを設計する段階で「研修後の導線」を例えば以下のようにあらかじめ組み込んでおくといいですね:
- リマインドの自動化: 1週間後や1ヶ月後に要点を配信する。あわせて、質問や相談をいつでも受けられるコミュニケーション手段を用意しておく。
- 実践の仕組み化: 研修の最後に「明日からやること」を宣言させ、その進捗を週次や月次で上司と共有するプロセスを作る。
- コミュニティ化: 受講者同士が現場での成功・失敗事例をシェアし、刺激し合える場を作る。
まとめ:真の評価は「現場」で起きる
どこぞの映画のセリフではありませんが、真の評価は会議室(アンケート用紙)で起きているのではありません。「現場」で起きているのです。
IDの本当の勝負は、受講者が研修室のドアを閉めた後に始まります。打ち上げ花火を上げて満足するのではなく、その火を現場で灯し続けるための「仕掛け」までをセットで設計すること。それが、形骸化した研修を「組織の力」に変える唯一の道です。
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