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Instructional Design(教育設計)

Category: 日本語記事

  • 「とりあえず、このSOP読んどいて。わからなかったら聞いてね」 新しい業務を教えるとき、こんな風に声をかけていませんか? 言われた側は、分厚いファイルを前に「放置された……」「これ全部読むの?」「何がわからないかわからない」と、受動的(Passive)でネガティブな気持ちになりがちです。 インストラクショナルデザイン(ID)において、学習者を置いてけぼりにする設計は避けたいものです。たとえ「読むだけ」のSOP(標準作業手順書)であっても、「自分で読み進めて理解できる」ものに整頓していく。そうすれば、SOPは「手抜き」ではなく、受講者を自立させる「最高のギフト」に変わります。 そこで本記事では、ID目線でのSOPのあり方についてお話しします。 1. SOP(標準作業手順書)の「絶望あるある」 現場で「機能していない」と言われるSOPには、共通の「絶望ポイント」があります。 ただ一日中何かを読んで、結局何も得られないとなると、知識を確認する機会もなく、受講者にとっては絶望しかありません。 2. IDで「Passive」を「Active」に変える ID目線でSOPを考える場合、まずはSME(専門家)などのステークホルダーから情報をもらい、ID自身がその内容を深く理解します。 実はこの過程が重要で、ID自身が「ここからここへの流れは何故?」「図解はないの?」と疑問を持つことで、一番の学習者目線になれるのです。 例えば、いきなり「〇〇の使い方」を出すのではなく、以下のようなロードマップを設計します。 お料理教室に例えてみましょうか。 お料理教室の先生が開口一番「はい、人参切って」「次は炒めて」「お水入れて」と言って、受講者が訳もわからず従ったら「はい、カレーができました」となるより、最初に「今日はカレーを作ります」「材料はこれです」「こういう流れで作ります」と説明があった方が、やる側も心の準備ができて、自分の動きを想像できますよね。 自分が今どこにいて、何を見ているのか。それがわかるようになれば、自習であっても路頭に迷うことはなくなります。 3. 情報量のバランス 日本では「漏れなく全て書くこと」が親切だと思われがちですが、情報の洪水は受講者を思考停止に追い込みます。良かれと思って詰め込んだ情報は、初心者にとって「これを全部覚えなきゃいけないの?」というプレッシャーに変わります。 IDの主な仕事の一つに、膨大な情報から「必要なもの」を見抜いて削ぎ落としたり、専門用語をイラストやシンプルな言葉に翻訳したりすることがあります。 つまり、「受講者を迷わせないこと(Don’t make them think!)」こそが最大の親切だという割り切りであり、IDが「Read this, and you’ll be fine」と胸を張って言えれば、その資料が現場の「困りごと」を完璧に先回りして、解決策を最短距離で示しているという自信の裏返しでもあるということです。 まとめ:SOPは「信頼」の証 しっかりデザインされたSOPは、放置の道具ではありません。講師がいなくても、受講者が自信を持って一歩踏み出すための「勇気の書」です。 受動的な「お勉強」から、能動的な「課題解決」へ。 受講者を「教えられる対象」ではなく「自ら成果を出すパートナー」として信頼する。その信頼を形にしたものが、ID流のSOPなのです。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 「研修の時間は取れても5分、できれば2分でお願い」 「今の人は、マニュアルを渡しても活字を読んでくれない……」 心当たりはありますか?最近の研修現場でよくある「お困りごと」の一つに、「受講者のリソース(時間と集中力)の枯渇」があります。 単に忙しいという理由もありますが、ショート動画や二倍速に慣れている受講者にとっては、5分でも長く感じられます。もはや、10分も20分も学習に時間を割くのが難しい……という現状があるのです。 そこで本記事では、ID(インストラクショナルデザイン)の視点で、この極限の制約をどう「整頓」し、成果につなげるかを考えてみます。 そもそも「お勉強」をさせていませんか? 私たちがやりがちな失敗は、2分という短い時間の中に、これまでの「30分研修」の内容を無理やり凝縮して詰め込むことです。早口の動画、文字びっしりのスライド……これでは受講者の脳はパンクし、内容を確認する前に拒絶反応が出てしまいます。 ここでIDが提案する整頓術は、「学習目標を一つに絞る」ことです。 あれもこれもと欲張らず、「この2分でこれをできるようにする」「この2分でこの仕組みを理解する」というように、1つの目標に絞り、達成に必要な要素だけをシンプルに取り入れます。 整頓のヒント: 例えばステップバイステップガイドなら、スクリーンショットと要約した説明を1ページにまとめる。シンプルに、でも要点は押さえて「1つの」学習目標を達成させる内容にします。 内容によっては、2分のコースが10本作られるかもしれません。でも、20分のコースをダラダラやって何も得られないよりは、受講者が自分に必要な「2分」をピックアップできれば、その「2分」は確実に成果につながります。 潔く「本題から入る」マイクロラーニング 伝え方の違いについて、よく「日本は理由が先、欧米は結論が先」と比較されることがありますが、研修内容にもその「文化の違い」があるかもしれません。 「日本は……」とすると主語が大きすぎるのであまり好きではないのですが、傾向として日本の研修資料は、挨拶、背景、理論……と階段を一段ずつ登るように構成されがちです。 対するカナダ(北米流)のマイクロラーニングは、開始3秒で本題に入ります。 「今日は〇〇のトラブル解決について。ステップは3つ。画面を見てください。」 これだけです。活字を追わせるのではなく、直感的なビジュアルや動画で「脳のメモリ」を消費させずに情報を届けます。彼らにとって2分は「じっくり理解させる時間」ではなく、「今すぐ動ける状態にする時間」なのです。 IDができる「2分の設計図」 もし「2分でやって」と言われたら、IDはこう情報を整頓します。 まとめ:IDは「時間」のデザイナー 「2分しかない」は、ピンチではありません。 それは、私たちが受講者に押し付けてきた「過剰な情報」を削ぎ落とし、本当に現場で役立つエッセンスだけを抽出する絶好のチャンスです。 受講者の貴重な2分を奪うのではなく、2分で彼らの仕事を楽にする。 情報の形を整えるだけで、研修は「負担」から「武器」に変わります。 皆さんの現場で、真っ先に「2分に整頓」できる情報は何ですか? 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 「研修をEラーニング化(デジタル化)した方がいいよね……」 そう思いつつも、いざとなると腰が重くなる。あるいは対面(アナログ)推進派から「対面じゃないと意味がない」「画面越しでは熱量が伝わらない」などと猛反発を食らう。そんな経験はありませんか? 前回の記事で、研修をID(インストラクショナルデザイン)の視点で構造化し、整理整頓する大切さをお伝えしましたが、今回は、対面からデジタルに移行する際に「気が進まない」原因について見ていこうと思います。 「デジタル化?無理。」となる理由 なぜ私たちは、デジタル化と聞いただけで「別モノ」だと構えてしまうのでしょうか。ITスキル不足?今までのやり方で困ってないから変えなくていい?前例がない? ひとつの理由として、『対面での「温度」や「現場の空気感」という武器が奪われることへの不安』があるのではないでしょうか。「講師の熱量でなんとか乗り切ってきた」「受講者の顔色を見てその場で内容を変えてきた」――。そうした、いわば「現場の職人技」が封じられてしまう気がする、、、。デジタルはわからない、、、。不安になるのもわかります。 しかし、「対面」や「デジタル」はあくまで提供する「手段」であって、「研修」や「学習」という「目的」は変わりません。 実は『手段(器)』が変わることに怖気づいているだけで、『教育のプロとしての腕(設計力)』が否定されたわけではないのです。 そこで、一度立ち止まって、提供する「中身」を整頓してみましょう。 「手段」は変わっても、「原理原則」は変わらない ここで、一番大事なのは、 対面(アナログ)だろうが、デジタルだろうが、教育設計(インストラクショナルデザイン)における「Instructional Principles(教育の原理原則)」は同じだということです。 例えば、そもそもなぜ研修や学習が必要なのでしょうか。その原点に戻ると、例えば以下のようなポイントが挙がってきますね: これらは対面だろうがデジタルだろうが、1ミリも変わらない本質です。多くの人がデジタル化に怖気づくのは、この「手段」の変化を「目的」の変化だと勘違いしてしまうからです。 デジタル化とは、新しい魔法を覚えることではありません。あなたが対面研修で培ってきた「問題を解決し、目標を達成させる」というスキルを、ただ別の器(メディア)に載せ替えるだけのことなのです。 「デジタルだから」という言い訳を卒業する もし、実施した研修で思うような成果が得られなかったとき。私たちはついつい、こんな「言い訳」を探してしまいませんか? でも、あえて立ち止まって考えてみると、それは「手段」を犯人に仕立て上げて、本質から目を逸らしているだけかもしれません。 成果が出ない本当の理由は、デジタルという「形式」にあるのではなく、例えば などの「設計(アプローチ)」の不備にあることがほとんどです。 「デジタル化したから失敗した」のではなく、「設計の不備が、オンラインという環境で露呈しただけ」といったように、きちんと原因を追及して潔く認めることが、研修をアップデートする大きな第一歩になります。 まとめ:注目すべきは「器」ではなく「設計」 対面もデジタルも、あくまで学習者の目標達成を支えるための「手段」に過ぎません。 「手段」のせいにするのをやめて「原理原則」に注目することで、研修は場所や形式を選ばず、どこでも成果を出せる「本物」へと進化します。 テクノロジーは進化しますが、人が学ぶ仕組み(原理原則)はそれほど簡単には変わりません。だからこそ、私たちが学ぶべきは「ツールの使い方」ではなく、「原理原則の活かし方」なのです。 これさえ忘れなければ、対面からデジタルになっても、絶対にいいプログラムを提供できるはずです(^^)。そして、こうした「気持ちの引っかかり」や「思考の混乱」を整理し、研修を“設計の言葉”で捉え直すのが、IDの役割です。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • IDが「整頓」するのは、学習の「入り口」と「置き場所」です。 つまりそれは、「誰が・いつ・どこで・何を学ぶのか」を迷わせない設計のことです。 「〇〇部はこのトレーニング動画を見てください」「△△部はXXで研修を受けてください」「□□部は新しいeラーニングを導入したので、各自対応をお願いします」「派遣社員の方は、この資料を読んでおいてください」 部署や立場ごとに研修方針が異なり、教材や資料の置き場所もバラバラ。こうした状態では、情報の共有もしづらく、成果の把握も困難になります。 今、多くの企業がこのような 「教育リソースの交通渋滞」 に頭を悩ませています。そこで注目されているのが、ID(インストラクショナル・デザイン) という考え方です。 企業が「IDの専門家」を求め始めるのは、単に新しい研修を作りたい時ではありません。社内の教育が自力では整理しきれなくなり、「何がどれだけ役に立っているのか分からない」状態に陥った時なのです。 そこで本記事では、IDの視点から 「学習手段」と「置き場所」をどう整頓するかについてお話しします。 「手段の洪水」を整頓する:メディア・セレクション 部署や個人によって、課題や研修環境は異なります。そのため、 「アプリで学べた方が手軽だ」「これからはウェビナーの時代だ」 といったように、手段(How)から考え始めると、研修はどんどん散らかっていきます。 本来はチュートリアル動画1本で済む内容なのに、各部署がそれぞれステップバイステップガイドを作り、別々の場所に保存している——そんなケースも珍しくありません。 こうした場面でIDが重視するのは、 といった前提条件です。それらを踏まえた上で、例えば以下のように最適な研修方法を選択・提案します: 「あれもこれも」と足すのではなく、目標に照らして「今はこれが最善策だ」と決めること。これが、戦略的な整頓の第一歩です。 「置き場所」を整頓する:LMSとコンテンツライブラリ 研修手法を絞り込んでも、それらがバラバラに存在していては、学習者は迷ってしまいます。 例えば、 といった状態を防ぐのに重要なのが、「必要な時に、必要なものに手が届く」環境を作ることです。 その際、たとえばLMS(学習管理システム)を使えば、受講者ごとに「受けるべきコース」を整理したり、「今どこまで終わったか」などの進捗を一覧で管理できます。また、散在しがちな資料はコンテンツライブラリとして集約しておくことで、探す手間を大きく減らせます。 これは単なるシステム導入の話ではありません。「ここに来れば、次にやるべきことが分かる」という、 学習者が迷わず進める 一本の道を設計すること なのです。 まとめ:今、企業に求められている「整頓」 コロナ以降、企業研修の形は急速に多様化しました。さらにAIや新しいIT技術の登場によって、新しい手法やトレンドは次々と生まれています。 それらを追いかけながら、常に整理し直すのは簡単なことではありません。 企業がIDを必要とするのは、もはや「良いコンテンツ」があるだけでは不十分だと気づき始めたからでしょう。 膨大な情報の中から、「必要なものを、最適な形で、最短距離で届ける。」という「整理・統合する力」 こそが、 今の企業教育に最も不足しているピースです。 そこでIDは、新しい研修を「増やす」ための手法ではなく、すでにある学習を「機能する形に整え直す」ための設計思想だと捉えてください。 そしてIDがこのような「お困りごと」を解決できた時、企業の学びは、ようやく前に進み始めます。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 前回の記事では、ゲーミフィケーションの「楽しさ」が学習目標を追い越してしまう悲劇についてお話ししました。 では、「楽しく学べるゲーミフィケーションなら問題ないのか?」 ちょっと待ってください。それは誰にとっても楽しいものですか? そこで本記事では、もう一つの深い落とし穴である「エンゲージメント(没入感)」と「アクセシビリティ」の衝突についてお話ししたいと思います。 「直感的な操作」という名の試練 「受講者に能動的に参加してほしい!」という設計者の熱意が、時として受講者を物理的に追い詰めることがあります。 例えば皆さんが考える「受講者」は、おそらく「日々のちょっとした動作を問題なくこなせる人」だと思います。 ここで少し立ち止まって考えてみてください。本当に、今までもこれからも「全員」がそのような受講者でしょうか。 1. 「ドラッグ&ドロップ」に潜む罠 例えば、学習内容の理解を深めるために、画面上の要素を正しい場所に並べ替える「ドラッグ&ドロップ」のクイズを導入したとします。設計者は 「単なる選択肢ポチポチより、自分で動かす方が没入感が出るよね!」とか「手を動かしたりビジュアルがあった方が飽きないよね」みたいに思いながらドラッグ&ドロップを選ぶでしょう。 いい感じです。受講者の意欲をこれでもかと引き出そうとしています。 ここで質問。以下のような状況の受講者がいたらどうなるでしょう?: 彼らにとって、このドラッグ&ドロップの「没入型クイズ」は、学習ではなく「苦行」に変わります。ゴール直前で指が滑り、正解が元の場所に戻ってしまった瞬間、受講者はマウスを床に投げて踏んずけてしまうかもしれません(苦笑)。これがお昼前でお腹がすいてたりしたらもう大変です(泣)。 そうなると、もはや学習どころではありません。 どうすればいい?: > 「ドラッグ&ドロップ」を使うなら、必ず「クリックだけで選べる選択肢」など、代替の操作手段を用意しましょう。「どんな環境でも、同じゴールに辿り着けるルート」が複数ある。これが本当の意味での「直感的な設計」です。 2. 「制限時間」が奪うもの では、「ランキングを盛り上げよう!」と、回答スピードに応じてポイントが入る仕組みを作りましょうか。受講者は 「早く答えなきゃ!」というドキドキ感でエンゲージメントが高まる……はずです。 ハラハラドキドキで一生懸命取り組む受講者、、、いい感じです。 ここでまた質問。 受講者の中に、じっくり文章を読み解きたい人、視覚情報を処理するのに少し時間がかかる人、あるいは単にキーボード入力が苦手な人がいる場合はどうなるでしょうか。 タイマーのカウントダウンは「励まし」ではなく、受講者を追い詰めるただの「プレッシャー」になってしまいます。 焦るあまり中身を読み飛ばし、とにかくこのタスクを終わらせることに集中し、結果として何も身につかない。 これももはや学習どころではありませんね。 どうすればいい?: スピードを競わせるのではなく、「じっくり考えるモード」と「タイムアタックモード」をユーザーが選べるようにしたり、速さよりも「正確さ」に高いポイントを振る設計を検討しましょう。 「アクセシビリティ」は制限ではない 「アクセシビリティを考えると、面白いことが何もできない」と思うかもしれません。 でも、本当の「エンゲージメント」とは何でしょうか? それは、特定の環境や身体能力を持つ人だけが楽しめる「特権的な体験」ではなく、「どんな状況にある受講者でも、ストレスなく内容に集中できる状態」のことではないでしょうか。 操作でイライラさせてしまった時点で、その教材のエンゲージメントは本来の目的を失い、学習目標達成への貢献はゼロどころかマイナスです。 まとめ:設計者の「優しさ」をシステムに ゲーミフィケーションで「操作の楽しさ」を追求するのは大賛成です。学習が楽しいと受講者も続けやすいですからね。ただそこに、例えば「この操作って今の私ならできるけど、マウスが使えなくてもできるかな?」といったような想像力をひとさじ加えるだけで、教材はぐっと優しくなります。 アクセシビリティは、誰かを助けるための「特別なルール」ではなく、受講者全員を学習目標まで安全に送り届けるための「ガードレール」なのです。そしてそのガードレールをうまく取り入れることで、ゲーミフィケーションが学習目標達成への貢献になります。 「楽しい!」の入り口を広げて、みんなが置いてけぼりにならない設計を目指していきたいですね 🙂 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • インストラクショナルデザイン(ID)の世界にもトレンドはありますが、その代表格といえば「ゲーミフィケーション」です。最近は色々な「楽しく学ぶ」工夫がありますよね。大人でも結構熱中しちゃうことがあります。熱中しすぎて、通勤電車の降りる駅を過ぎちゃうことも……(笑)。 ただ、IDはあくまで「学習設計」であって、残念ながら「楽しさ」そのものがゴールになるわけではありません。楽しく学べたらそれが最高ですが、それで本来の「学習」が置いてけぼりになったら元も子もありません。 そこで本記事では、ゲーミフィケーションを「学習目標の達成」にどう繋げるべきか、陥りがちな落とし穴と共にお話しします。 「ゴール」は何ですか? 1. 「世界観」を作り込みすぎて、中身が薄まる悲劇 例えば、私が気合を入れて「RPG風コンプライアンス研修」を作ったとします。渾身の作品です。受講者は絶対好きなはず!案の定、受講者は豪華なアニメーションを眺め、伝説の武器を手に入れるためのミニゲームに熱中します。 さすが私です。 ……しかし、いざ研修が終わって感想を聞いてみると。 「あのラスボスを倒す時の演出、すごかったですね!」 「武器の強化に30分もかけちゃいましたw」 ……あれ? 肝心の「コンプライアンス対策」については、誰の口からも出てこない。 一体、私は何を作ったのでしょうか(苦笑)。 2. ポイント獲得競争による「達成感」の迷走 よし、今度はランキング機能を導入して受講者の競争心に火をつけてみましょう。受講者が「よっしゃ、1位になってバッジをコンプリートするぞ!」と言っています。 んふふ、、、計画通りです。 ところが、受講者は「内容を理解する」ことよりも、「いかに最短ルートで正解をクリックし、ポイントを稼ぐか」という攻略法を見つけることに全神経を注ぎ始めます。 もはや中身を読まず、正解のパターンだけを暗記してランキングを駆け上がるその姿は、学習者ではなく、効率重視の「プロゲーマー」です。 一体、私は何をしたかったのでしょうか(苦笑)。 何がいけなかったのか? では、何がいけなかったのでしょうか。 受講者が研修に熱中すること自体は、悪いことではありません。ただ、本来の目的である「コンプライアンス対策」の学習目標がどこかへ行ってしまったら、それは単なる「ゲームで遊んだ時間」になってしまいます。 研修で目標が達成されなければ、いくら楽しくても意味がありません。IDが忘れてはいけないのは、あくまで「学習目標」です。作るものはすべて、目標達成のルート上に配置されていなければなりません。 楽しさを追求するあまり「手段が目的」になってしまうと、上記のような悲劇(喜劇?)が起こります。 学習目標を達成する手段としてゲーミフィケーションを取り入れるのは大賛成ですし、昨今の目まぐるしい技術発展を活かさない手はありません。ただ、それによる「楽しさ」や「エンターテインメント」を追求してしまうと、ゲーミフィケーションが貢献できる本来の役割からズレてしまいます。 まとめ:楽しさは「おまけ」ではなく「ブースター」であるべき ゲーミフィケーションは強力な武器ですが、使いこなすのは意外と難しいものです。 「楽しかった!」という感想の後に、「で、結局何を学んだんだっけ?」という沈黙が流れたら、設計者はそれを「失敗」と受け止めなければなりません。 私たちが設計しているのは、受講者を「楽しませるためのゲーム」ではなく、あくまで「学習目標を達成するための体験」なのです。ゲーミフィケーションで単に「楽しむ」のではなく、「楽しく学ぶ」ものを作っていきたいですね 🙂 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 「終わったー!」 研修の最終セッションが終了し、受講者が満足げな顔で部屋を出ていく。手元のアンケートをさっと集計すれば、並んでいるのは輝かしい「オール5」の数字。 「はー終わった〜。やっぱり私最高。」 ……ちょっと待ってください。そこで終わりですか?あなたの仕事がここで終わっているとしたら、その豪華な研修は、夜空に消える一瞬の「打ち上げ花火」で終わってしまうかもしれません。 そこで本記事では、研修担当者がつい陥ってしまう「研修やりっぱなし問題」についてお話します。 満足度の余韻に隠れた「冷酷な真実」 前回は、アンケートの「オール5」が必ずしも成功を意味しないという話をしました。しかし、本当の恐怖はその先にあります。研修担当者が「アンケート結果も良かったし、無事に終わった!」と打ち上げ(あるいは安堵)をしているその裏で、受講者の頭からは、学んだ内容が驚くべきスピードでこぼれ落ちているのです。 研修の本当の成果は、当日の熱狂ではなく、その後に現場で起きる「変化」——パフォーマンスの改善、技術の向上、問題解決、あるいは外部からの評判——によってのみ証明されます。 そこで重要になるのが、学んだことを忘れない「知識の維持(Knowledge retention)」と、それを現場で実際に使う「学習転移(Transfer of training)」です。いくら研修で「わかった!」と盛り上がっても、現場に何も残らなければ、その設計は「うまくいかなかった」ということになります。 研修は「イベント」ではなく「プロセス」である 多くのIDが陥る落とし穴は、研修当日を「ゴール(終着点)」に設定してしまうことです。 イベント思考になると、当日の盛り上がりがピークであり、それが終われば「あー終わったー」と解散。すぐに「はい、次のプロジェクトいってみよう。」となってしまいます。 そこで研修の成功には、研修はあくまで現場を変えるための「きっかけ」にすぎない、というプロセス思考が重要になってきます。 当日どれだけ豪華な打ち上げ花火を上げても、その光が現場のデスクを照らし続けなければ、投資した時間もコストも「ただの気晴らし」に消えてしまいます。 私たちID(インストラクショナルデザイナー)がフォーカスすべきなのは「研修の実施」ではなく、「研修による現場の変化」です。 「現場の日常」という強力な引力 受講者が研修室を一歩出た瞬間、彼らを待ち受けているのは「溜まったメール」「緊急のトラブル」「いつものルーチン」という強力な引力です。 研修で学んだ「新しいやり方」は、慣れるまでは一時的に効率が落ちます。フォローアップがないと、受講者は数日以内に、より楽で馴染みのある「元のやり方」へと引き戻されてしまいます。これがIDの世界で言われる「学習転移の失敗」です。 だからこそ、研修内で「わかった」の先にある「どう活かすか(Apply)」までを徹底的に設計する必要があります。 例えば、研修の中に極めて実践的なロールプレイやケーススタディを取り入れ、「新しいやり方」への心理的抵抗を最小限に留めておくなど、研修を、現場での実践を見越した「予行演習」にしておくといいですね。 設計者の仕事は「研修が終わった後」にこそある この落とし穴を避けるには、プログラムを設計する段階で「研修後の導線」を例えば以下のようにあらかじめ組み込んでおくといいですね: まとめ:真の評価は「現場」で起きる どこぞの映画のセリフではありませんが、真の評価は会議室(アンケート用紙)で起きているのではありません。「現場」で起きているのです。 IDの本当の勝負は、受講者が研修室のドアを閉めた後に始まります。打ち上げ花火を上げて満足するのではなく、その火を現場で灯し続けるための「仕掛け」までをセットで設計すること。それが、形骸化した研修を「組織の力」に変える唯一の道です。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 前回は「お仕事引き受けすぎ問題」についてお話ししました。忙しさに負けて設計のプロセスを端折ってしまうと、そのツケは意外な形で回ってきます。その代表例として、評価設計の甘さによる「全部『5(大変満足)』の満足度調査」が挙げられます。 アンケート結果を見て「満足度100%!大成功だ!」と喜んでいる方、実はそれは、学習者からの「やっつけ仕事」かもしれません。 そこで本記事では、インストラクショナルデザインにおける「評価」の設計についてお話します。 その「満足」に中身はありますか? 研修の最後に配られるアンケートの全項目に「5(非常に同意する)」が並んでいるのを見て、胸をなでおろした経験は誰しもあるはずです。 しかし、ここには以下のような大きな落とし穴が潜んでいます: 「全部5」の結果は、時に「可もなく不可もなく、特に印象に残らなかった」ことの裏返しでもあるかもしれません。 なぜ「アンケートの張り切りすぎ」が裏目に出るのか IDとして詳細なデータを取ろうと意気込むあまり、アンケートを細かく作りすぎていませんか?実はこれが「全部5」を誘発する原因になります。 学習者にとって、研修後のアンケートは「振り返り」の時間であるべきです。しかし、「あなたが知りたい」設問が20問も30問もあると、それは「内省」ではなくただの「やっつけ作業」に変わります。 考えてもみてください。研修が終わって考えることは何ですか? 多くの人はもう研修のことなんか考えたくないですよね。質問を詰め込みすぎることは、学習者の貴重なアウトプットの機会を奪い、結果としてデータの信頼性を自ら下げてしまうことになるのです。 「評価」の目的を再定義する:笑顔ではなく変化を測る アンケートの目的は、ステークホルダーに「満足度」を報告して安心させることではありません。プログラムを改善し、学習者の「行動変容」を促すことです。 まとめ:真の評価は「現場」で起きる 「全部5」のアンケート結果に満足して改善を止めてしまうこと。これこそがIDが最も警戒すべき落とし穴です。 素晴らしい評価とは、アンケートの数字ではなく、「受講者が現場でこれまでと違う行動をとった瞬間」にあります。 アンケートを「作業」にさせない。そして、数字の裏にある学習者の本音に耳を傾ける。研修後のアンケートがその研修のためだけではなく、「次につながる評価設計」になるように目指しましょう。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 先日はAI活用やSMEとの連携についてお話ししてきましたが、今回は久々の落とし穴シリーズ。 ID(インストラクショナルデザイナー)が陥りやすい「落とし穴」の一つに、「お仕事引き受けすぎ」があります。 特にお休み明けのこの時期、溜まっていた依頼や「とりあえずこれお願い」という無茶振りに、NOと言えずパンクしていませんか? 実はこの「引き受けすぎ」には、単に自分が忙しくなるだけでなく、本来の『設計』という付加価値を損なうリスクが潜んでいます。 そこで本記事では、IDとしてお仕事を引き受ける際の判断基準や、SMEやステークホルダーを巻き込んだ戦略的な優先順位の付け方についてお話しします。 なぜ「引き受けすぎ」が致命的な落とし穴なのか 依頼をすべて受けていると、私たちの仕事は「学習設計」から「やっつけ作業」へとすり替わってしまいます。そうなると、一番の被害者は学習者です。 「とりあえずスライドにして」「急ぎで動画にして」という依頼をこなすだけで精一杯になると、ID本来の価値である「分析」の時間が消えます。 「なぜこれが必要なのか」「これで学習者は何を得られるのか」「本当にこの研修で課題が解決するのか?」 こうしたことを考える余裕がなくなると、「とりあえずこの日までに渡す」こと自体が目的になり、SMEから受け取った情報をそのまま流し込むだけの「情報の洪水(Brain Dump)」が出来上がります。 良かれと思って引き受けた仕事が、皮肉にもプログラムの質を下げ、学習者の時間を奪うという「最大の失敗」を招いてしまうのです。 引き受ける基準:その依頼は「学習目標」に直結しているか? 受け持つプロジェクトで忙しくなってきたら、例えば以下のように立ち止まって考えるための基準を持ちましょう: 「全部やります」と答えて質を下げるより、「学習効果を最大化するために、今はここにリソースを集中させます」と提案したり、チームにもっと適任者がいないか確認するなど、自分の許容量を把握して、難しかったら代替案を挙げるなどといった行動は、プロとしての誠実さです。 優先順位の付け方:SMEやステークホルダーを「味方」にする 優先順位は自分一人で抱え込んで決めるものではありません。以下のように周囲と連携することで、客観的な「正解」が見えてきます。 SMEと「インパクト」を握る: 専門家は「全部大事」と言いがちです。そこを例えば「現場で最もミスが起きているのは?」「初心者が最初につまずくのは?」などとと問いかけ、「今何が必要か」を優先して設計すべきポイントを絞り込みます。 ステークホルダーと「現状」を共有する: 締め切りやチームの状況を可視化し、「今のリソースで質を担保するなら、どれを優先すべきか?」を相談しましょう。もし締め切りや緊急性が被っていたりしたら、関係者にどれか動かせるものがないか確認するのも一つの手段です。これは拒絶ではなく、プロジェクトを成功させるための「冷静な現状分析」の共有です。インパクトや緊急性は、彼らとの対話の中ではじめて明確になります。 まとめ:自分のキャパシティをマネジメントする 優先順位をつけずに何でも引き受けると、すべての仕事が「中途半端な60点」になります。 リサーチを端折って形だけのアンケートを作れば、受講生は中身を読まずに全部の「すごく同意」に〇をつけ、現場は何も変わりません。そんな「やりっぱなし」を防ぐためにも、IDには「意思表示の勇気」と「優先順位を提案する力」が求められます。 「便利屋」を卒業し、周囲を巻き込んでリソースをコントロールする「戦略的パートナー」を目指しましょう。最高の設計は、あなたの「余裕」から生まれます。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 昔は「通信教育」、今は「オンライン学習」として、自分のペースで学ぶことができますが、今は自分でできる学習プログラムが本当に多種多様にありますね。 朝活として少し早く起きて英単語を覚える、サブスク講座を通勤電車で見る、週末に無料で見られるウェビナーを視聴するなど、様々な選択肢があります。 ただその一方、色々試した挙句どれも長続きしなかったという経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。 「無料だからやってもやらなくても変わらない」、「時間がないからまた今度する」、「一人じゃやる気が起きない」など、「自分で学ぶ(セルフスタディ)」というスタイルがうまくいかない理由はさまざまです。 しかし、学習者が途中で挫折してしまうのは、本当に本人の「やる気」や「意志の強さ」のせいだけでしょうか? インストラクショナルデザイナー(ID)の視点で見れば、挫折の多くは「学習者の気合が足りない」のではなく、「設計が現代人の脳の仕組みに最適化されていないこと」に起因しているような気がします。 そこで今回は、学習者が様々な理由から「ついやめてしまう」のを未然に防ぎ、完走へと導くための3つのID戦略についてお話しします。 1. 「無料の罠」を突破する:心理的投資の設計 無料、あるいは安価なeラーニングの最大の敵は、「失うものが何もない」という気楽さです。人間には「得ること」よりも「失うこと」を強く忌避する損失回避(Loss Aversion)という心理があります。 実際、筆者も数年前にオンライン講座を取った時は「これだけ払ったんだから頑張らねば!」と頑張りぬきました。無料だったら500%挫折してます(笑)。もちろん講座の内容や自分の目標などもありますが、やはり授業料によってコミットできたのかもしれません。 ID戦略例 学習者に莫大な料金を払わせる必要はありませんが、あえて有料にするのも一つの戦略になるかと思います。学習者は何かしら払うことで、それがいい意味でプレッシャーになり、学習のモチベーションになりますからね。 また、あえて最初に「このコースで何を成し遂げたいか」を自分の言葉で入力させたり、現在のスキルチェック(Pre-test)を受けさせたりするのもいいかもしれません。 「自分の目標を宣言した」「ここまで進めた」という既得権益を学習者に感じさせることで、「ここでやめるのはもったいない」という心理的なコミットメントが生み出されます。 2. 「1時間の壁」を壊す:ドーパミン・チャンキング 筆者も含めて、現代人は大体待つのが苦手です(笑)。用事があればすぐに済ませたいし、わからないことがあればすぐに解決したい。そんな現代人に「画面の前で1時間座って集中してください」というのは、ショート動画やSNSに慣れた現代人には、もはや「無理ゲー」に近い要求です。 ID戦略例 上の例のように、60分を一気にやるとなるとハードルが高いかもしれませんが、5分を12日に分けて行うのは、「できるかもしれない」気持ちになるのではないでしょうか。どちらも同じ60分なのに、その60分がどのように提供されるかで、受ける側の気持ちが変わってきます。 また、その12回を例えばスタンプラリーみたいにして可視化すると、自分の現状がわかって完走しやすくなります。途中でお休みしても、どこから再開すればいいかもわかりますもんね。 そして、単なる分割ではなく「報酬」を設計する コンテンツを5〜10分単位に刻む(チャンキング)のは基本ですが、重要なのはその「つなぎ目」です。 各チャンクの終わりに、すぐに正解がわかるクイズや、学んだことを即座にアウトプットする場を設けます。この「できた!」という小さな成功体験(Quick Wins)が脳内でドーパミンを放出させ、「次の5分もやってみよう」という連鎖を生み出します。 3. 「誰かいますか?」に応える:社会的実在感の演出 自習の最も過酷な点は、画面の向こうに誰もいないという「孤独感」です。勉強してても、今どこを勉強しているか、テスト対策はどうするか、ここがわかったか確認したいなど、生身の人間との交流がしたいと思う時があるのではないでしょうか。一人で黙々と勉強するのは集中できていいかもしれませんが、たまに「誰かぁ~」と言いたくなる時もありますよね(笑)。 ID戦略例 たとえリアルタイムの交流がなくても、設計次第で「Social Presence(社会的実在感)」を吹き込むことができ、「人間のつながり」を演出することができます。 例えば、コースをガイドやコーチ付きのストーリー仕立てにして、 「〜である」という説明文ではなく「〜してみませんか?」といったような語りかけのトーンにして「学習者に語りかける対話型」の文章にしたり、登録者との交流やQ&Aに対応する掲示板を設けたり、実際に会って話すことができなくても、「生身の人間同士の交流」を提供することはできます。 また、AIを単なる検索機ではなく、「一緒に伴走し、励ましてくれる相棒」としてキャラクター化するのもいいですね。例えばわからないことがあるときに、「これについてこう思うけどどうかな」とAIに聞いて意見をもらったり、課題があったら「これでこの課題を進めようと思うけど大丈夫かな。」ってフィードバックをお願いしたり。AIが相棒だと「今聞いても大丈夫かな。寝てるかな」など心配する必要がありません(笑)。 まとめ:設計が「背中」を押し続ける 「やる気を出せ」と精神論を説くのは、IDの仕事ではありません。 学習者が「うんうん。それでそれで?」、「どんどん行こう」、「ついうっかり最後までやってしまった」といった状態を、戦略的に作り出す仕事です。 効率化(AI)を追求し、専門家の知恵(SME)を詰め込んだその先に、学習者の心に寄り添う「挫折させない設計」があって初めて、学びは成果へと繋がります。 次回のコース設計では、「意志の力」を信じる代わりに、「設計の力」を信じてみませんか? 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]