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Instructional Design(教育設計)

Category: 日本語記事

  • 昨今のAIの発達っぷりはすごいですね。インストラクショナルデザイン(ID)界隈でも、AIの活用が急速に広がっています。 「ものづくり」において、0から1にする作業が一番時間がかかります。何もないところから作り出す苦労は、IDも同じです。AIが普及するまでは、当然すべて人の手で行われてきました。 インストラクショナルデザイナーとして、AIは痒い所に手が届く、ありがたい存在であることは間違いありません。「こんな感じのコースを作りたい」「このターゲットオーディエンスのためのモジュールを作って」と言えば数秒で作ってくれる――まるで魔法の杖のように語られることもあります。 AIあったらめっちゃ楽や~んって思うかもしれませんが、AIはあくまでお手伝いをしてくれる「ツール」であって、プロジェクトを主導する「リーダー」ではありません。魔法は存在しないのです。 では、AIはインストラクショナルデザインにおいてどのような立ち位置なのでしょうか。 そこで本記事では、インストラクショナルデザインにおけるAIの役割や利点・課題についてお話していきます。 インストラクショナルデザインにおけるAIの役割と利点 「サポーター」としての業務 AIは、膨大なデータの整理や、ゼロからイチを生み出す際の壁打ちにおいて、例えば以下のように労働集約的な作業を肩代わりしてくれます: これらは決して「手抜き」ではありません。プロジェクトの基礎を素早く構築するための「戦略的効率化」です。 また、学習目標やアクティビティを自分で考えたはいいが、それが多すぎて絞れないとなった時に、AIにどれがいいか聞いてみることもよくあります。 AIをこうした「たたき台作り」に活用することで、一人で煮詰まることなくコース作成に取り組むことができます。「相棒」みたいな感じですかね。 浮いた時間を「より重要なこと」へ投資する コース作成には様々な作業が伴います。インストラクショナルデザインにおいて、限られた時間の中でどこにどのくらい時間をかけるかは重要です。 AIを活用する最大の利点は、単なる時間の節約ではありません。節約して「浮いた時間をどこに充てるか」にあります。 教材開発(Develop)のフェーズをAIで効率化することで、例えば以下のような、IDの本質的な業務により多くの時間を割くことができるようになります: AI使用の課題 AIは確かに便利ですが、まだ発展途上であり、AIですべてが解決するわけではありません。 まだまだ人の手が必要であり、AIだけで完結するものではありません。 「人間による検証(Human Verification)」と「専門的判断」の不可欠性 AIがどれほど優れた提案をしても、それだけで完結させてはいけない理由があります。それは、AIは「その組織独自の文化」や「学習者が置かれた特有の文脈」、そして「最終的なビジネスゴール」を本当の意味では理解していないからです。 ここで、IDとしてのプロフェッショナルな判断(Professional Judgement)が必要になります。 また、AIは様々な有益情報を提供してくれますが、その情報がどこからのものなのか、その情報が正確なのかは、生身の人間による検証(Human Verification)が必要です。 この「人間による検証」のプロセスこそが、教材に魂を吹き込み、成果を保証するのです。 まとめ:AIに主導権を渡さずうまく付き合う AIでプロジェクトの骨組みがより早くできるようになり、より効率的にプロジェクトの作業が進むようになるでしょう。しかし、プロジェクトを主導し、意思決定を下すのは常に生身の人間であるべきです。AIは「依存先」ではなく、うまく付き合っていく「相棒」であるべきです。 IDが「主導権(Lead)」を握り続け、AIを最高の「サポーター」として機能させることで、私たちはこれまで以上に価値のある学習体験を提供できるようになるはずです。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • その「頑張り」は本当に成果ですか? 📌 シナリオ:提案が「手抜き」に変わった瞬間 あなたはインストラクショナルデザイナー(ID)です。 あなたの会社では、入社したら3日間の新人研修が行われます。 あなたはこの研修は1日にできると考え、その非効率な研修を改善すべく、IDの論理に基づいて「3日間の研修を、1日のウェビナーとEラーニング」に効率化する企画を上層部に提案しました。 しかし、返ってきた反応は、あなたの専門性とは異なる「感情」や「文化」に根ざした、厳しいものでした。 「3日間の対面研修」が「1日のオンライントレーニング」になるという、一見すると合理的なこの提案が、なぜ賛同を得られないのでしょうか? このシナリオこそ、日本の企業研修における「研修時間=頑張り」という独特な文化と、私たちIDの専門家が目指す「成果までの最短距離」が根本的に衝突している実態を映しています。 そこで本記事では、この文化的な摩擦を避けつつ、IDを使って効率化を「戦略的な成果」として進めていく具体的な戦略についてお話します。 なぜIDの「効率」は衝突するのか? 日本独自の「頑張り」文化と「時間信仰」 多くの日本企業には、プロセスそのものが「努力」や「熱意」として評価される「時間信仰」が存在します。研修後に具体的な行動変容やビジネス成果を測る仕組みが弱いため、結果的に「時間」という曖昧な軸で評価せざるを得ない構造があります。 また、eラーニングのアクセスログの厳密なチェックや、オンライン研修でのカメラオンの強制といった「監視文化」がID導入を阻みます。学習者は「学ぶこと」より「監視の目をクリアすること」に集中し、本質的な学習が疎かになるのです。 IDが求める「効率」の定義 IDにおける「効率化」は、決して研修の手抜きや時間短縮につながるわけではありません。 IDは、ADDIEモデルの分析(Analyze)フェーズに基づき、まず「パフォーマンスにおける期待と現状のギャップ」を明確化し、それを埋めるのに本当に必要な要素のみを「設計(Design)」するプロセスです。 つまり、我々IDの結論は明確であり、「時間をかける=一生懸命やる」ではないということです。 IDの目的は、最短で最大の成果を出すことであり、私たちの言う「効率化」は、「学習者が最も早く現場で成果を出せるように「学習体験を最適化」する」ことなのです。 「手抜き」から「戦略的成果」への変換 では、IDの導入を「手抜き」ではなく「戦略的貢献」と見なしてもらうにはどうすればいいのでしょうか。 例えば以下のような戦略が挙げられます: 戦略 1: 頑張りを「行動変容」に変換する(カークパトリックレベル3) 評価軸を「参加した」という頑張りから「研修後に現場で行動が変わったか」という成果に切り替えます。 カークパトリックのレベル3(行動変容)に基づき、研修終了後、一定期間を経てから上司の評価やピアレビューを通じて、具体的な行動の変化を測定します。これにより、「時間」ではなく「行動」という確固たるID論理で評価できます。 戦略 2: 浮いた時間を「戦略的な投資」としてコミュニケーションする 効率化で浮いた時間や費用は、「削減コスト」ではなく、例えば費用だったら、「その他の問題に取り組むためのトレーニングの開発および実施」、時間だったら「1日は全体の新人研修に費やし、残りの2日は部門ごとに分かれてより専門的な研修を行う」など、「より重要な学習や戦略的な業務に再投資できた時間」としてポジティブに報告します。 これは「手抜き」ではなく、「リソースの戦略的最適化」であり、会社のリソースを有効活用した貢献であると、上層部にロジックを提供します。 戦略 3: 監視から「自己管理」へと評価軸を転換する 監視文化の壁を乗り越えるため、受講者の「席にいる時間」といった監視をやめ、学習後の「課題達成度」や「現場での実践レポート」といった成果に直結する項目に評価を移行します。 学習者に自己調整学習(Self-Regulated Learning)を促すためのフィードバックを設計することで、監視コストを削減しつつ、自律的な学習者を育成することが可能になります。 極端な言い方をすれば、監視そのものが成果を生むわけではありません。いくら時間をかけようが机に向かって一生懸命やろうが、結果が出なければ、監視は不毛な労力になってしまいます。 「監視されている」ということで「とにかく無事に研修を終わらせる」ことが目標になってしまっては、その3日間は「ただの3日」になってしまいます。 まとめ 本記事では、日本企業に根付く「研修時間=頑張り」という文化が、なぜIDの「効率化」と衝突しやすいのかを整理しました。 IDにおける効率化とは、手を抜くことではなく、学習者が最短で成果を出せるように学習体験を設計することです。 あなたの組織では、研修の価値は 「どれだけ時間をかけたか」で評価されていますか。 それとも「どんな行動変容が起きたか」で評価されていますか。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • アクセシビリティ(A11Y)と聞いて何を思い浮かべますか? 多くの人は「色のコントラスト」「字幕」「代替テキスト」など、身体的な制約がある学習者への配慮、すなわちインクルーシブデザインを思い浮かべるでしょう。もちろん、これも学習環境の土台として不可欠です。 ただ、IDの仕事はそこで終わりではありません。 IDが解決すべきアクセシビリティの課題には、専門用語(Jargon)が飛び交う内容を「いかに理解し、行動できるか」という認知的な壁もあります。 ID における「アクセシビリティ」とは アクセシビリティ(Accessibility、略してA11Y)とは、誰もがその能力や環境に関わらず、情報やサービスにアクセスし、利用できる状態を指します。 一般的なIT分野では、身体的・技術的な障壁を取り除くことに焦点が当てられますが、インストラクショナルデザイナー(ID)におけるアクセシビリティは、さらに一歩踏み込みます 。それは、単に情報が見える・聞こえるだけでなく、「その情報を理解し、行動を変える」ことができる状態を保証することです 。 IDの視点から見ると、アクセシビリティは以下の二つの要素で成り立っています 。 では、具体的に例を挙げてみてみましょう。 ①物理的アクセシビリティ:同じ情報なのに。。。 物理的な面から見たアクセシビリティについて見てみましょう。 この二つは同じことが書いてあります 。どちらが見やすいでしょうか? 一見、左側の方がカラフルで目がいきやすいですが、背景と文字の色のコントラストが不十分で、文字サイズも「読みやすい」とは言い切れません 。他方、右側はシンプルですが、背景と文字のコントラストがはっきりしていて、文字サイズも適切です 。 誰もが「使いやすい」情報なのは、適切なコントラストとサイズが確保されている右側ですね。 ②認知的アクセシビリティ:同じ内容なのに。。。 次に、認知的アクセシビリティの面から見てみましょう。 どちらも同じ内容ですが、どのように見えますか? 左側のレシピを読んで具体的に映像が浮かぶ人は少ないのではないでしょうか 。そもそも専門の人でない限り、何を言ってるかあまり伝わらないように思えます 。 対する右側は専門用語をかみ砕いて一般向けの言葉に変えており、言葉を補足する形でイラストも使われています。 このように、伝えるべき情報をいかに「使える情報」に変えるかという翻訳者の役割こそが、IDの核となる能力です。 アクセシビリティ実現のポイント インストラクショナルデザインにおいて、「私もわかるしみんなもわかる」など、デザイナー視点で偏って見ないことが大事です 。 そこでアクセシビリティを考慮し、どんな学習者でも情報を「理解し、記憶し、活用できる」ことを保証するデザイン戦略を取り入れましょう 。 主なポイントとしては、以下が挙げられます: ✅ チェックリスト:物理的アクセシビリティ 項目 目的とIDのチェックポイント 文字サイズ 見出しや本文は適切なサイズになっているか。パソコンや携帯など、どんなデバイスでも適切なサイズになっているか。 色のコントラスト 背景と文字のコントラストは十分にはっきりしているか。背景の色によって文字が見にくくなっていないか。 メディアのサイズ 挿入された画像は適切なサイズか スペース 文字間や行間のスペースは適切に取られているか ✅ チェックリスト:認知的アクセシビリティ 項目 目的とIDのチェックポイント 専門用語(Jargon)の翻訳 知識レベルに関わらず理解できるか?業界用語や略語を、学習者が既に知っている言葉(Plain Language)に翻訳しているか。初出時に定義を添えているか。 構造とナビゲーションの一貫性…

  • インストラクショナルデザイン(ID)の理論を学ぶと、誰もが一度は「理想の学習体験」を思い描きます。魅力的なストーリー、緻密なスキャフォールド、洗練されたインタラクション…。 しかし、実際のプロジェクトに入ると、時間・リソース・組織文化・関係者の利害 といった“現実”が大きく立ちはだかります。 では、IDとしてそのギャップをどう埋めていけば良いのでしょうか。 IDの仕事は「理想を押し通すこと」ではない よく誤解されますが、IDの役割は「理想的な学習モデルをそのまま実装すること」ではありません。 本来の役割は、 完璧な学習デザインが必要なのではなく、制約の中で最も学習効果が高い選択をする判断力 が求められます。 ギャップは「悪いこと」ではなく、むしろ前提条件 プロジェクトでは、ギャップは必ず発生します。 IDの仕事は、この “前提として存在するギャップ” に向き合い、 それでも成果を出すための仕組みを作ること です。 すり合わせのコツ:3つの視点 理想と現実の間を埋めるために、私が特に大切だと思う視点は次の3つです。 1. 学習目標を「絶対に守る領域」と「調整可能な領域」に分ける 例えば: 守るべき領域 調整できる領域 「守るもの」と「変えられるもの」を明確に線引きすると、話し合いが圧倒的にスムーズになります。 2. 関係者の“本当の目的”を探る 関係者が表面的に言う要望には、しばしば 隠れた意図 があります。 例えば、表向きの要望は「動画でお願いします」には、実は「受講者が読み飛ばすから困っている」という本音が隠れてたり、 「スライドを派手にしてほしい」の隠れた意図(本音)は「上層部に説明しやすい形がほしい」だったり、、、。 真正面から理想をぶつけるより、背景や事情を理解しながら妥協点を探る方が、結果的に効果的 です。 3. 完璧さより“1歩前進”を優先する IDは改善サイクル(イテレーション)が前提です。 原案 → コメント → 修正 → テスト → 改善…というプロセスを繰り返すため、一度で完璧に仕上げる必要はありません。 むしろ 小刻みに進めた方が訂正しやすい です。いっぺんに仕上げて「ドヤァ」と提出した後に「こことここを直して。これはこれと差し替えて。ここは要らない」などと言われたら泣きますよ(涙)。 なので、 この方針を共有するだけで、関係者とのすり合わせが劇的に楽になります。 すり合わせが上手くいくと何が変わる? つまり、すり合わせのスキルはプロジェクト成功の核心 と言っても過言ではありません。 まとめ 理想と現実のギャップは、IDの現場では「当たり前」に存在します。大切なのは、ギャップに抗うのではなく、…

  • 企業研修に見る「文化」と「学び方」の違い 学習や研修のスタイルって、国や文化によってけっこう違うんですよね。その違いを理解することは、効果的な教材を作る上で欠かせません。 私は今カナダにいますが、日本ではまだ対面式の研修が主流だと感じます。新入社員と教育係の関係性を大切にし、「直接教える・一緒に体験する」スタイルが根付いています。 もちろんカナダにも対面研修はありますが、リモートワークやハイブリッド勤務の普及もあり、オンライン研修が急速に一般化しています。 日加の対照的な文化:「島」と「ブース」が生む学び 両国で研修スタイルが異なる背景には、職場文化が深く関係しています。 日本の「島」と“監視し合う空気”が生む学び 日本には「先輩・後輩」文化が強く、「上を見て学ぶ」スタイルが自然と浸透しています。 そして個人的な見解ですが、日本には少し “監視し合う空気” があるように感じます。オフィスの席も「島」型で、お互いが見える配置が多いですよね。 この環境は、教育係によるきめ細やかなフォローがしやすく、学習者が孤立しにくいというメリットがあります。 カナダの「ブース」と「自律」が生む学び 一方カナダはオフィスが ブース型 で、良くも悪くも「各自で頑張って」という雰囲気。物理的にも心理的にも距離があるぶん、自律した学び方が受け入れられやすいのだと思います。 またカナダは国土が広いこともあり、通信教育やオンライン学習が昔から普及していました。スマホも Zoom もない時代から、100%オンラインのプログラムが普通に存在していたんです。 (私も昔は課題を郵送したり、ディスカッション用の電話番号にかけて議論していました。ある日電話を「ミュート」にしたつもりがなってなくて、気付かずに鼻を思いっきりかんでしまい、インストラクターに「誰かわからないけど大丈夫?」と言われたこともあります(笑)。) こうした背景から、カナダでは「オンラインで学ぶ」ことに抵抗が少なく、むしろ自分のペースで進めたいというニーズが強いと感じます。 国ごとの学び方を教材設計に活かす 文化や環境の違いは、教材づくりに直接反映できます。例えば学習者にとって最適なプログラムを設計するために、同期型(Synchronous)と非同期型(Asynchronous)を使い分けます。 対象国 文化・学習ニーズ 教材設計の方向性(Instructional Design) 日本 教育係によるフォローが前提。孤立を避けたい 自分で進められる内容はオンライン(Asynchronous)で提供。対話や質問の機会を意識し、Synchronous(例:ライブQ&A、Zoomグループワーク)を入れると安心感が生まれる。 カナダ 自分のペースで進めたい、自律学習志向が強い 必要に応じてSynchronous(ライブ)でのウェビナーなども取り入れるが、基本は自己完結型 + 任意参加ディスカッション。国内に時差があるため Asynchronous(オンデマンド動画、課題提出)が好まれる。 文化背景を意識して設計することで、学習者に寄り添った、より学びやすいプログラムが実現できます。 まとめ:インストラクショナルデザイナーとしての強み 文化や環境の違いを理解して教材を設計することは、私のインストラクショナルデザイナーとしての強みのひとつです。 これからも「学習者にとってわかりやすい教材」を最優先に、効果的で続けやすい学びの形を追求していきたいと思います。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 前回はデザイン段階の「エゴデザイン」について書きましたが、今回は開発段階におけるの「こだわり」の落とし穴についてお話しようと思います。 「こだわり」を持つことの重要性 インストラクショナルデザイナーとして「こだわり」を持つことは悪いことではありません。 例えば「明るいイメージにしたいから背景に黒はできるだけ使わない」とか、「大事な部分は丸々1ページ使って説明する」など、そのこだわりが効果的に働くのであればむしろ「強み」として持っておいた方がいいと思います。 ただ、それが間違った方向に行ってしまうと、、、学習者は置いてけぼりになってしまいます。 こだわりあるある 自分本位の教材開発 デザインで熱が入ったあと、いざ教材やコンテンツを開発し始めると、つい自分のこだわりを優先してしまうことがあります。 「1ページに2セクション入れるルールを作って一貫性を出そう。ん?ちょっと文字がぎゅうぎゅうかな。でも2セクション入れたいからこの図を小さくしてこっちに動かせば、、、できたっ。」「ここは大事だから、大事とこには黄色のハイライトでバーンと入れて、ここの図も大事だからデッカイ図をこのハイライトの横にドーンと差し込んで解説ね。」 …そのこだわりは学習者のためですか? 私もつい「自分ルール」を作ってしまいがちなので、耳が痛い話です(笑)。でも、自分が作っていて満足するもの=学習効果が高い、とは限りません。 アクセシビリティの軽視 さらに、この自分本位の作り込みが進むと、例えば以下のようなアクセシビリティがおろそかになりがちです。 どれも小さな問題に見えますが、「誰もが学べる環境作り」というのは、多様な学習者の状況を考慮することが大前提です。「あなたが」見やすい、「あなたが」読みやすいものを作っても、学習者によっては大きな障壁になり、せっかく作った教材も学習効果が半減してしまうことがあります。 ID的解決策 そこで、ID の目線で考える際には、以下のような項目を頭に入れておくとが重要です: まとめ:あなたのこだわりは学習者を支えることにプラスに働いていますか? 今回は、開発段階で陥りがちな「こだわりの落とし穴」についてお話しました。教材やコンテンツは、作り手のこだわりや見栄ではなく、学習者が目標を達成するための道具です。ここでしっかり意識することが、せっかく作ったプログラムを「価値ある学習体験」に変える第一歩です。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 前回はリサーチ(Analysis)における目標設定の落とし穴について書きましたが、今回は設計(Design)における落とし穴あるあるです。これは私もあります(笑)。 エゴデザイン リサーチをしっかりやって学習目標も決めました。さぁデザインしていきましょう。 「あ、これ大事よね、あ、これも大事だから絵で解説しようかしら、ここはしっかり説明しないといけないから1ページ取っちゃいましょう。」 、、、これ学習目標何だったっけ? 、、、ありがちです(苦笑)。 溢れ出る情熱をそのままデザインに反映させてはいけません(笑)。IDのプロセスにおいて、この「エゴデザイン」は、ゴールを決めた船が、あらぬ方向へ進んでしまう原因となります。 今回は、この熱意が仇となる二つの落とし穴を見ていきましょう。 エゴデザインあるある この落とし穴は、主に「個別の集中」と「全体構造の喪失」によって発生します。 1. 「あれもこれも」と知識を詰め込みすぎる ありがちな状況としては、「あれも大事これも大事」と、学習目標達成には不要な背景情報や補足知識などをどんどん追加したり、学習者の目に留まるように、派手なアニメーションや複雑な機能を盛り込んでしまったりすることがあります。 知識を詰め込みすぎると、学習プログラムの「核となるポイント」がわかりにくくなり、学習者は混乱します。また、情報量過多なプログラムで圧倒され、やる気や自信をなくしてしまいます。 IDの解決策: こういった状況を防ぐには、溢れ出る情熱は保ちつつ(笑)、設計の全工程で、「この情報は、学習目標の○○という行動にどう貢献するのか?」という単一の問いに立ち返るチェックリストを持つことです。また、チャプターやセクションなどの節目節目で全体の流れをチェックすることも重要です。 2. 個々の要素に集中しすぎて、全体の流れを壊す これもまたありがちですが、デザイナーが、例えばチャプター①の出来栄えに熱中しすぎるあまり、そのチャプター①の知識からチャプター③の実践にどう繋がるかといった「全体の流れ(シークエンス)」までは考えていないというようなことがあります。燃え尽き症候群ですね(笑)。 学習プログラムは、独立したパーツの合計ではありません。学習者が「最も効率的かつ記憶に残る順序」で知識やスキルを積み上げられるように、各要素を構造化していかないといけません。個々のパーツが素晴らしくても、「バラバラな情報の寄せ集め」では記憶の定着や現場での応用が難しくなります。理由付けや意味づけで個々を関連付けた方が、記憶に残りやすく定着しやすいですよね。 そこで、設計の初期段階で学習ロードマップ(全体像)を視覚的に作り、個々の集中よりも全体の流れを優先するチェック体制を設けることが重要です。 まとめ:デザインの目標は、作り込むことではない 今回は、私もよく陥りがちな「エゴデザイン」についてお話しました。 IDの設計・開発の目標は、「学習者に寄り添い、効率よく学習目標を達成させること」です。デザインは自己満足ではなく、学習者をゴールへ導くための手段であることを常に意識しておく必要があります。 では、次回はどの「あるある」を書こうか、また決めておきますね 🙂 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • 今回は、学習環境を作る際に陥りがちな「落とし穴」についてご紹介したいと思います。 目標迷子(What なのか How なのか) 家づくりにはしっかりした土台が重要であるように、学習プログラムの作成においてもしっかりした土台は重要です。その「土台」となるのはリサーチです。リサーチが甘いと、その上に何を建てても不安定なものが出来上がります。 よくある落とし穴の一つとして、学習プログラム作成の最初の一歩である「問題のリサーチ(分析)」が甘いと、目標設定も甘くなります。 多くの企業研修でありがちなのが、リサーチが不十分なことによって現状をきちんと把握できておらず、例えば、「とりあえずリーダーシップについてプログラム作って理解してもらうか」など、目標を「ふわっと」設定してしまうことです。これだと、目標がどの程度達成されたかを測ることができません。それこそ「ふわっと」は感じるかもしれないですけどね。 その結果、目標が「〜の理解」「〜の習得」などと曖昧な知識レベルで進み、研修を受けても、現場での行動(パフォーマンス)に変化が出ないという、ビジネス成果につながらない不毛な結果に終わってしまいがちです。 インストラクショナルデザイン(ID)の解決策 IDの観点では、目指すのは「行動(パフォーマンス)目標」です。リサーチ段階で、「学習者の現時点のスキルレベル」と「研修後に会社が求める具体的な行動」をきちんと紐づけます。 例えば、先述のリーダーシップ研修の場合、リサーチを行って「学習者はリーダーシップの知識は十分だが、それが現場でいかされていない(スキルに繋がっていない)。どういかせばいいかわからないという声がある」という情報を得たとします。 そこで「知識を実際の現場に生かせるようにする」という目標を立てれば、「じゃあケーススタディを盛り込もう」「ロールプレイでやってみよう」など、より実践的なトレーニングを作る指針となるわけです。 そのために、リサーチ段階できちんと現状を把握して必要な情報を集め、「どのレベルに到達すれば、現場で具体的にどんな行動ができるようになるのか」という研修後に測定可能な行動を目標に定めるのです。これが決まることで、初めてそのトレーニングプログラムが学習者に提供する価値が決まります。 まとめ 今回の記事では、IDにおける土台であるリサーチ(Analysis)が甘いことによる「目標迷子」という落とし穴についてお話しました。 目標設定は、現状の課題をきちんと把握して、例えば「〜の理解」や「〜の習得」といった知識レベル(What)が目標なのか、「研修後に測定可能な具体的な行動(How)」まで掘り下げるのが目標なのかなど、リサーチに基づいた目標をきちんと立てることが重要です。これが決まらない限り、トレーニングプログラムはビジネス成果につながらない不毛なコストになりかねません。 リサーチ段階でこの落とし穴を避けることが、あなたの研修を「コスト」から「投資」に変える第一歩です。 次はどのあるあるを書こうかな 🙂 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • はじめまして AP Learning の酒井です。日本出身ですが、現在はカナダを拠点にインストラクショナルデザイナーとして活動しています。 インストラクショナルデザイナーって? 「学習目標に沿ったカリキュラムを設計・開発する人」と言うと少し堅いですが、要は 「学びやすい学習環境をつくる専門家」 です。例えば新入社員研修などの学習プログラムを設計するときに、学習者の背景や目的を考えながら、「知識が定着しやすい」「自信を持って取り組める」学習プログラムをデザインしていきます。 AP Learning を始めた理由 きっかけは「リスク分散」という現実的な理由でした。仕事はいつなくなるかわからない。それなら「自分の強み」である教育を、自分の意思で自由に届けてみたい。そう思ったのが始まりです。 AP Learning の理念 学びの根っこはシンプルです。私が大切にしているのは、どんな学習者に対しても: これは幼児教育でも、成人教育や企業研修でも同じです。アプローチは違っても、学習者が「できた!」と感じる瞬間こそが知識の定着につながり、学びが楽しいものになります。 今後の展望 これから少しずつ活動を広げていきながら、AP Learning を通してより多くの人に「学びの楽しさ」と「効果的な学習体験」を届けていきたいです。どうぞよろしくお願いします! おまけ:AP Learning の名前の由来 ちなみに、AP Learning の「AP」は Awesome Pawsome Learning の略です。「学びって最高!(Awesome)」で、「一歩ずつ前に進む(Pawsome)」という気持ちを込めました。あと、、、ロゴに肉球を入れたかった(笑)。ちょっと遊び心のある名前ですが、理念や取り組みは本気です。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]

  • インストラクショナルデザイン(ID)とは、「誰もが成果を出せる学習環境をつくる専門家」です。 例えば、「新入社員用の企業研修マニュアル」があったとしましょう。それが300ページにも及ぶマニュアルで「これ読んでおいて。あとでテストするから。」と言われたら、どうでしょう。受講者はテストに怯え、内容をただ頭に詰め込むだけで終わってしまい、テストが終われば知識は現場で使われることなく抜けていってしまうでしょう。 これが ID の手にかかれば、その非効率な学習体験は「成果につながる学習環境」へと大変身です。その一例として、ADDIEに基づくインストラクショナルデザインの過程をご紹介しましょう。 まずは ADDIE の「A(Analysis)」 IDがまず行うのは、徹底したリサーチ(Analysis)です。ここはすごく重要で、ここが甘いと大けがをします(そのうちIDの落とし穴あるあるでも書いてみます)。 リサーチの段階では、「なぜそのマニュアルを読む必要があるのか?」「そもそも300ページを全て読まなければ、業務に支障が出るのか?」など、関係者と連携します。そして、「最終的に会社のビジネス成果にどう影響するか」という視点で、現時点の課題、学習の目的、達成目標などを客観的に分析して決めていきます。 次は ADDIE の「D(Design)」 そのゴールが決まれば、次は「設計(Design)」です。どうすれば学習者が最も効果的にスキルを習得できるかを検討し、内容を学習しやすい「仕組み」**へと変えていきます。 例えば、リサーチで「学習者が業務中に費やせる時間は限られている。1日10~15分が限度」という情報を得ていたとしたら、1チャプターを10分以内に収める設計をします。また、リサーチで「習得してもらいたい重要な行動」についての情報を得ていたら、その効果的な習得法として、「実際の業務に基づいた実践的なケーススタディ」を提案し、現場での意思決定力を高める学習環境を構築していくのです。 そして ADDIE の2番目の「D(Development)」 設計が固まったら、いよいよ開発(Development)です。ここでは、いきなりすべてを完成させるのではなく、「プロトタイプ(試作品)」をサクッと作り、担当者や少数のユーザーに試してもらいます。この段階で、例えばオンライン学習を提供するなら、PCだけでなくスマートフォンでもストレスなく学べるレスポンシブデザインは、学習の障壁を取り除くための設計上の義務として組み込みます。 この「試作品」の段階で、ユーザーテストやフィードバックを得て修正を繰り返すことで、大規模な手戻りを事前に防ぎます。 ついに ADDIE の「I(Implementation)」 準備が整ったら、コースの実施(Implementation)です。実施して「はぁ~終わった~」ではなく、IDの仕事はまだまだ続きます。 実際のコース提供を始めると、開発段階では想定しなかった「運用上の問題」や、「学習効果のばらつき」が生じることがあります。これこそがIDの最終ステップ評価(Evaluation)が最も重要になる瞬間です。 最後に ADDIE の「E(Evaluation)」 そこで、最初に設定した「ビジネス成果」というゴールに基づいた指標(例:業務ミスの減少率など)を継続的に計測・評価し(Evaluation)、データが示す課題に応じて学習環境をアップデートしていきます。ここでもし新たな問題が生じたら、A(Analysis) に戻ってリサーチです。 IDは一度作って終わりではなく、継続的に効果を高め続ける「改善サイクル」をつくるお仕事なのです。 まとめ このような感じで、インストラクショナルデザイン(ID)とは、勘や経験ではなく、科学と体系的なプロセスで「成果」をデザインするお仕事です。 次は、学習環境を作る際に陥りがちな「ID の落とし穴あるある」について書いてみますね。 【企業研修・ID導入等のご相談はこちら↓↓↓】 → [お問い合わせページ] → [無料カウンセリング予約ページ]