先週、インストラクショナルデザイナー(ID)の月一のオンラインの集いで、「究極の3択」のような問いが投げかけられました。
「トレーニングを設計・提供する際、一番優先すべきクライアント(相手)は誰か?」
選択肢はこの3つ:
- Learner(現場の受講生・エージェント)
- Stakeholder(内容の専門家・SME)
- Leader(経営層・ビジネスリーダー)
立場によって意見が大きく分かれそうな問いなので、どれが正解でどれが不正解というのはないのですが、皆さんなら誰を選びますか?
ピンとこない場合は、「もしこの3者が同時に違うことを要求してきたら、どの要求を優先するか?」と考えてみるといいかもしれません(もちろん、それぞれの要求はどれも理にかなっているものとします)。
ちなみに筆者は、IDとしての視点から 「Learner(学習者)」 を選びました。
誰に自信を付けたい?
筆者自身、トレーニングを考えるときに常に意識しているのは「自信(Confidence)」です。
誰に自信がつけば状況が改善するのか。
そう考えると、まず最初に思い浮かぶのは、やはりトレーニングの対象者である学習者です。
どれだけリーダーが優れた戦略を描いていても、実際に行動する現場の人たちが自信を持てなければ成果にはつながりませんし、SMEが豊富な知識を持っていても、それが現場で活用されなければ意味がありません。
なので、現場の担当者が「これならできそうだ」と思えることが出発点だと思っています。
学習者だけ気にしていればいいのか
もちろん、企業研修は慈善事業ではありません。
企業は利益を出さなければなりませんし、トレーニングにもコストがかかります。ROIやKPIを考えるのも重要です。
だからこそ、Learner-centred(学習者中心)の設計が大切になります。
例えば『学習者中心のトレーニングを提供する」→「現場のパフォーマンスが向上する」→「顧客満足度が上がる」→「利益につながる」といった感じです。
つまり、ビジネス目標を達成するためにも、最初に向き合うべき相手は学習者だと考えています。
利益と現場のバランス
一方で、世の中の研修を見渡してみると、意外とStakeholderやLeaderの顔色をうかがって作られたものが少なくありません。
特に最近よく見かけるのが、コスト削減やスピード向上を目的に、社内の優秀な社員や専門家に「教材や動画も自分たちで作ってしまおう」といった「研修の内製化」です。
これは決して悪いことではないですし、むしろ、現場の知識を素早く教材化できるという大きなメリットがあります。
ただ、ここで「学習者が必要としている形になっているのか?」という視点が見落とされているかもしれません。
SMEはその道のプロなので、豊富な知識や情報を提供してくれます。ただ、それを学習者がどう学ぶかは別の問題です。
例えば、新人向け研修でSMEは50個の商品知識を伝えたいかもしれません。
でも新人が明日必要としているのは、「最初の問い合わせに対応できる」という自信だったりします。
まとめ
専門家の頭の中にある複雑で膨大な知識を、学習者が「これならできる」と思える形に整理し、段階的に届けるのがIDの役割だと思っています。
もちろん、ビジネス全体の最適化という観点で見れば、「Leaderを最優先すべき」という考え方にも十分な合理性があります。
また、SMEがいなければ正しい知識そのものが存在しません。
LeaderもStakeholderも、どちらも欠かせない存在です。
それでも、IDとして優先順位を1つだけ選ぶのであれば、私はLearnerを選びます。
現場の人たちが「できる」という自信を持てないまま、ビジネスゴールを達成できるルートは、ID的には「なし」だからです。
あなたの会社の教材は、誰を思い浮かべながら作られていますか?
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